"個別的研究が蓄積された後に、人々はこれまで行なってきた研究を反省し、実はこれまで気づかなかった原理に従い、ある方法論にのっとって仕事を続けてきたのだということを発見する。この新しい意識は新たな力、つまり個々の問題に取りかかる際の新たな確信を与えることに成る。"
−「自然の観念」R・G・コリングウッド
日本バイオデータの技術開発は、通常2段階のプロセスを経ます。第1に、生物学者の直感的な理解をよく説明する数量化方法をつくるプロセスがあります。このプロセスによって、専門家の視点を共有することが可能になります。我々は、このプロセスのことを直感の外部化と捉えています。第2に、そうしてつくった数量化方法を応用して直感的に捉えられない部分を分析します。このプロセスは、データからこれまで見いだされて来なかった意味を取り出すことを可能にします。外部化した直感を一般化することによって科学者の直感を延長させ分析を進める方法論が、日本バイオデータの力です。
日本バイオデータはひとつの発明をもとに資金調達を行い、設立された会社です。発明について紹介します。薬をはじめとする生理活性物質の研究では、生きた動物に投与することによって行う動物実験の代わりに、細胞培養の培地中に研究対象物質を添加する細胞実験を頻繁に行います。細胞実験において物質の濃度は極めて重要です。薄過ぎる濃度では細胞の反応を見ることができず、また、濃過ぎる濃度では細胞の過剰な反応を引き起こしてしまいます。それらの極端な濃度での実験では、研究対象物質が人や生物の体内でどのような反応を引き起こすのか、明らかにすることができません。では、どの濃度であれば適切な実験を行うことができるのでしょうか。
実は、これまで理想的な濃度を調べる簡単な方法はなく、研究者たちは様々な濃度で実験を行い、なんとか納得のできる条件を探してきました。ある時、培養細胞の毒に対する反応を調べていた日本バイオデータの研究員は、だんだんと毒の濃度を上げて行くと、ある濃度を越えたところで細胞の遺伝子発現が大幅に変わることを発見しました。また、遺伝子発現が大幅に変わってしまった細胞では、細胞の正常な応答を見れないことがわかりました。それらの遺伝子発現データの情報エントロピーを測定したことろ、無毒から薄い毒の段階では情報エントロピーは一定の値をとり、ある濃度を越えたところから異なる一定の値を取っていました。
この研究から研究員は、情報エントロピーを用いることで生物の状態の変わり目をみつけることができることを知りました。 情報エントロピーを計算することによって、実験に適した物質の濃度を定量的に調べられるようになったのです。その後、様々な研究にこの方法を応用した結果、この方法は生理活性物質の細胞への影響を調べる研究だけでなく、例えば、微生物を大量に培養して有用物質を生産する場合にも、微生物の状態変化を調べる方法として応用可能であることが分かってきました。
日本バイオデータのコア技術は、数量化によって感覚を延長する方法論にあり、方法論のもとで産まれた個々の技術は副産物に過ぎません。新しい問題を解決するためは新しい解き方も必要です。新しい解き方をつくり続けることで、これまでにないデータ解析サービスを提供します。